Glossary ・ 用語 ・ 紙片の日本史

遺品返還(いひんへんかん)とは
——手帳が、六十年かけて家へ帰る

意味

遺品返還とは、戦地で亡くなった人の持ち物が、長い年月をへて遺族のもとへ返されることです。

戦場では、亡くなった兵士の手帳や写真が、しばしば相手側の兵士に持ち帰られました。それが数十年後、持ち主の家族を探して返される——田村義一の手帳は、そうして帰ってきた一冊です。

仕組み

田村の手帳を閉じたのは、書いた本人でした。最後の頁に、彼はこう書いています。

この海の彼方に懐かしい故郷がある。恋しい友が居る
交代の歩哨が来た。……戦場の生活はこうして一日一日と送られて行く。完

「完」と書いた三ヶ月後に、彼は戦死します。その閉じられた一冊が、オーストラリア軍に拾われ、キャンベラの戦争記念館で六十年眠り、二〇〇三年十二月、栃木・小山の家に帰りました。

出典:手帳末尾の逐語と返還の経緯=超詳細版(AJRP/AWM収蔵記録 PR02035・2003年12月10日返還式)。

名前が書いてあったから、帰れた——とは限らない

返還が成り立つのは、その紙に手がかりが残っていたからです。名前、部隊、地名、日付。

ただし田村の手帳には、著者名の記載がありませんでした。「田村義一」と呼べるのは、書いてあったからではなく、調べた人がいたからです。手帳には百首を超える歌が書かれていて、その中身が手がかりになりました。歌は、その人の輪郭と一緒に残ります。

返る先が分からないまま、いまも誰かの家にある紙片が、いくつもあります。

この言葉が出てくる紙片

(今後、返還をめぐる紙片が増えるたび、ここに加わります。)


田村義一 超詳細版 → 丸田年道 超詳細版 → 歩兵第239連隊 →

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