Glossary ・ 用語 ・ 紙片の日本史
カムイユカㇻ(神謡)とは
——神が、自分のことを自分で語る
意味
カムイユカㇻは、アイヌの口承文芸のひとつで、カムイ(神)が「わたし」として自分の身に起きたことを語る形式の歌です。
語り手は人間ですが、歌の中の「わたし」はカムイです。梟が、狼が、兎が、自分のことを自分で語ります。知里幸恵が筆記し、日本語に訳した十三篇は、この形式のものです。
仕組み
- 一人称で語られる——「わたしは〜した」と、カムイ自身が語ります。人間はそれを聞く側にいます。
- 折り返しがある——歌にはサケヘと呼ばれる折り返し(リフレイン)があり、一定の間隔で繰り返されます。十三篇の題は、どれもその繰り返される一行から取られています。
- 声で受け継がれる——文字ではなく、聞いて、覚えて、語ることで受け継がれてきました。いまも語られ、学ばれています。
幸恵の本は見開きで対になっています。左にローマ字のアイヌ語、右に日本語訳。一篇目は、こう始まります。
Shirokanipe ranran pishkan,
konkanipe ranran pishkan.
銀の滴降る降るまわりに、金の滴
降る降るまわりに。
出典:『アイヌ神謡集』冒頭=青空文庫(底本=岩波文庫/親本=郷土研究社1923)。超詳細版①で突合。
文字がないこと ≠ 記録がないこと
アイヌ語には文字がありませんでした。ですが、記録が無かったわけではありません。歌という形で、声のなかに保たれていたのです。
知里幸恵がしたのは、それを書き方から作って紙に移すことでした。ローマ字でアイヌ語の音を写し、日本語訳を添える——二つの言語を一つの頁に並べるという形を、彼女は自分で決めています。
⚠️「文字を作った」という言い方は正確ではありません。彼女が組み立てたのは、ローマ字でアイヌ語をどう書くかという方式です。
この言葉が出てくる紙片
- 知里幸恵(『アイヌ神謡集』十三篇と、その序文)
(今後、声で受け継がれてきた紙片が増えるたび、ここに加わります。)
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