Glossary ・ 用語 ・ 紙片の日本史
鹵獲文書(ろかくぶんしょ)とは
——敵の翻訳でしか、残らなかった言葉
意味
鹵獲とは、戦場で相手の物を奪い取ることです。鹵獲文書は、そうして相手側の手に渡った書類——命令書、地図、名簿、そして兵士個人の日記や手紙を指します。
奪った側にとって、それは情報でした。だから翻訳され、整理され、保管されます。その結果、日本語の原本が失われたあとも、英語に訳された言葉のほうが残るという事態が起きます。マキン島で拾われた名前のない日記は、その一つです。
仕組み
- 拾われる——戦場で、書かれたものが回収されます。日記や手紙も、敵情を知る手がかりとして扱われました。
- 訳される——専門の部隊が日本語を英語に翻訳し、報告書としてまとめます。
- 綴じられる——報告書は公文書として保管されます。個人の日記が、国の記録の中に入るわけです。
日本語が消えて、英語が残る
原本は多くの場合、戻ってきません。失われるか、どこかの書庫にあるか、誰かの家にあるか。残ったのは、訳された言葉です。書いた人の名前も、部隊も分かりません。
それでも、この一行だけは、他人の言語を通していまも読めます。
今日も、生きている。
最後の記入は、こうです——「初めて、石鹸で顔と手を洗った。」 戦いのさなかに、石鹸で顔を洗えたことを書き留める。名前は消えても、この一行の手触りは消えません。
⚠️訳は原文ではありません。私たちが読んでいるのは、英訳を日本語に訳し戻したものです。語順も、言い回しも、二度、他人の手を通っています。それを承知のうえで読む——というのが、この種の紙片の読み方です。
出典:G-2翻訳文書からの再翻訳(訳し戻し)。核となる二行は実物スキャンで判読=超詳細版。
この言葉が出てくる紙片
- マキンの名前のない日記(原本は不明/英訳のみが残る)
(今後、鹵獲された紙片が増えるたび、ここに加わります。)
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