Glossary ・ 用語 ・ 紙片の日本史
飛び石作戦(とびいしさくせん)とは
——攻めずに、素通りする
意味
飛び石作戦(島嶼跳躍・アイランドホッピング)とは、太平洋の島々をひとつずつ順に攻めるのではなく、要となる島だけを取って、あいだの島を飛ばして進むやり方です。
飛ばされた島は、攻められません。そのかわり、船も飛行機も来なくなります。佐藤冨五郎がいたウォッチェ環礁も、そうして素通りされた島でした。
仕組み
- 要の島だけ取る——飛行場や港として使える島を選んで攻略します。
- あいだを飛ばす——強く守られている島は、攻めずに通り過ぎます。犠牲を減らし、時間を稼ぐためです。
- 補給を断つ——飛ばされた島は、海と空を押さえられて外から何も入らなくなります。
昭和十九年二月、攻め落とされたのは、となりのクェゼリン環礁でした。ウォッチェには、上陸してきません。かわりに、船が来なくなります。冨五郎の日記には、こうあります。
交通ヲ断レシヨリ 早ヤ三ヶ月
だから、そこで何が起きたか
攻められなかった島に残ったのは、戦闘の記録ではありません。暮らしの記録です。日記に並ぶのは、種をまいたこと、風呂に入れたこと、匙を二本作ってもらった礼——「上水にシャジ二本作って貰ふ。了。感謝」。
そして、家族に宛てた頁に、食べたいものを、ひとつだけ書きました。
セメテ カドヤノ天丼デモタベタイ クサレタタクアンデモ良ロシイ
郷里の店の名前が、そのまま書いてあります。素通りされた島の記録は、何を食べたか、何が無いか、家族に何を伝えたいか——その順に書かれていきます。戦記に「激戦地」として名前が出ることはない。それでも、そこには人がいて、日記を書いていました。
出典:日記の逐語=仁平論文掲載分・みずき書林特設ページ公開分(超詳細版③⑤)。守備隊の人数・生還者の割合は資料により大きく異なります。
この言葉が出てくる紙片
- 佐藤冨五郎(ウォッチェ環礁・海軍第64警備隊/手帳)
(今後、素通りされた島の紙片が増えるたび、ここに加わります。)
ご指摘・お問い合わせは contact@fragmentsjapan.com まで。制作方針は こちら。